四百四病の外 15結局譲は滞在期間の殆どを床で過し(初日も含めて)工藤は椎原への怒りと結局はストーカーのせいだと思ってその怒りを向けた。 ついでにマンション前に張っていたのと店の前に張っていた男を確保し少しだけ八つ当たりしたのだが、それだけでは気が収まらない。 その苛立ちは数日経っても続いていた。 「ああ、腹が立つな。」 眉間に深く皺の入った状態で呟いたのは部下のいる前。 「く、工藤幹部?」 額に汗を掻くのは当然の事だろう。 その様子に気付いた工藤は右手を振る。 「いや、お前に対してじゃないから安心しろ。」 心の中で心底安堵の息を吐いてから部下は報告を続けた。 「やはり関連性は少ないかと思います。ですが、やはりウチ絡みのも数人居りますのでそちらの方を重点的にしたいのですが。」 「そうしてくれ。」 「はい。ただ、吊り上げるのは少々問題のある者が。」 「なんだ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・若狭組の次男が居りまして。」 工藤の眉間の皺が益々寄る。 「なんでそんなのが居る。」 「じ、自分にもわかりかねます。」 歴史ある組の組長の息子がどうして譲ストーカーの一人なのだと工藤は溜息を吐くしかない。 「若狭組は手出しをし難い。その上ウチとは交流が無いと来ると・・・伊藤組長に口を利いて貰うか。」 「それが一番かと思います。」 だが、報告している男も信じられないらしく、歴史ある組の息子がストーカー行為をしていると事実に戸惑いを隠せない。 しかも。 「それと実は、その・・・。」 「なんだ。」 部下は言い難そうな顔をした後、口を開く。 「・・・ウチのハッカーの奴が言っていたのですが、そいつがネット上で女神の本番シーンを撮ったと・・・あ、女神とは譲さんの事をそいつがネット上でそう呼んでおりまして。」 「は?」 大凡の意味は分かったが、そんな馬鹿なことがという意味で工藤は眉を上げると部下は言葉を補足する。 「日付から考えるとあの宿に行った時の事だと思います。」 言い切ったが部下は言わなければ良かったと思った。 それほど工藤の顔は凶悪なものへと変わっている。 ついでに室内温度も下がった気がする。 「ほう・・・つまりはそういう事か。引っかかったとはいえ、譲さんの、ねぇ。そうですか。」 (・・・・工藤幹部、笑わないでくださいっ。) 極道の身でありながら部下がそう思っても仕方ない。 「ふふふっ。これは、伊藤組長をけしかけましょうかねぇ。ふふふふふふふふふふ。」 指示を与えられ下がってよいと言われた退室した部下に同僚(?)が声を掛ける。 「おい、顔色悪いぞ。」 真っ青な男は自嘲した。 「ああ、そうだろうとも。あんな空間に居たら誰でも顔色位悪くなるだろうよ。」 ついでに言うなら一般人は気絶していただろう。 「おい。どうしたんだ?」 部下は暗い目で後は頼むと工藤が与えた指示と書類を丸投げしてから立ち去る。 首を傾げて見送った男は書類を読むと顔色が段々青くなった。 部下の男が工藤に報告した事と全く同じことを椎原に報告しなければならなくなったからである。 「嘘だろう。だ、誰かに押し付けよう。」 男は急いで下の者に報告を押し付ける為に走った。 前へ 次へ 創作目次へ |