肝胆、相照らす 11





 譲はもう一度キスをしてから甘えるように首に腕を回して耳元に囁く。

「立てないので浴室に連れて行ってください。」

 椎原は笑ってキスを返すと手早く身なりを整えて譲を抱え上げた。

 悠然とした足取りで寝室から浴室に向かい、床に一旦下してから乱れた着物と帯を解いて脱がせてから浴場へ。

 中は湯船が3分の2程しか溜まっておらず、入れ替えられている最中なのだと知れる。

 そういえばタオルも何枚も積み上げられており、着替えもあったような・・・と譲が考えている間に体にシャワーが掛けられた。

「あ・・・。」

「洗わないと入れないだろう?」

 椎原の言葉に軽く睨みつけるが全く本来の意味を成さない。

 局部の後ろ側、濡れている部分に最弱のシャワーが当てられ、其の後には指が差し入れられる。

 黙って耐えていても直後というのもあり眉間に眉が寄ってしまう。

 掻き出す手は何の意図も持っていないとしっていても、だ。

 声を漏らせば此処は浴室。

 いつも以上に恥ずかしい思いをするのは自分だ。

 譲は懸命に唇を噛んで声を殺す。

「譲。唇は噛むな。」

「っ、で、すがっ。」

「此処からリビングにまでは声は聞こえないだろう。」

 とは言っても聞こえる可能性もある。眉間に眉を寄せたまま唇を噛むのを止めようとしない譲に椎原は苦笑してから手早く終わらせる為に指を深く沈めた。

「あ、雅伸さんっ。」

「直ぐに終わる。」

 書き出し終えた後は桶を使って洗い、掛け湯をしてから湯船へ。

 既に疲れた風情の譲はされるがままだ。

 項や喉元に口付けをされ、胸元には華を散らされても文句一つ言うでもない。

 もっとも、目で抗議をしてはいたのだが甘える風情のある椎原には強く出る事が出来ないのも事実。

 甘えると弱くなると知った椎原は益々譲の肌に吸い付いていく。

 それを黙って受け止めていた譲だったがある事に気付いて重い口を開いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・雅伸さん。」

「ん?」

 言いながら鎖骨の横にきつく吸い付く椎原。

「あの・・・当たっているのですが。」

「気にするな。」

 本当に気にする必要が無いとばかりに肌に吸い付き、指は脇から腹までをゆっくりと撫でていく。

「でも、その・・・。」

 今更当たっても恥ずかしいというわけではないが、どうするのだろうと思う。

「手で、しましょうか?」

 譲の提案に椎原は笑って首を横に振る。

「お前の中の方がいい。それに夕食を待たせている筈だからな。もう上がろうか。」

 と言いつつも恐らくは先程乱暴な行為となってしまったために譲の体を慮っての言葉だろう。

 譲は僅かに苦笑してから椎原の手を引いて湯船の縁に座らせる。

「僕は気にしていませんから。」

 座った状態の椎原に向かって足を開き、抱きつく体勢を取り腕を背中に回す。

 椎原の腕も自然と背中に回されたのだが、その顔は困った、と言う風に見える。

(やっぱり今日の雅伸さんは、可愛い。)

 湯船に浸かっていた足を椎原の体を挟むようにしてあげ、誘うように太股を腰から下へと焦らすようにゆっくりと擦りながら動かす。

「譲。」

「雅伸さん、欲しくないですか?」

 可愛らしくも妖艶な笑みを浮かべて僅かに首を傾げる様を見せると椎原は眉間の皺を深くし、唸り声を上げた。

「覚悟しておけ。」

 言うと同時に体は繋がり、先程と同程度の激しさで譲を翻弄する。

 声を出す暇などない。

 ただただ広い背中にしがみ付いて受け止めるのが精一杯な程の椎原の激情。

 それが逆に嬉しいのだ。

 だが受け止めるだけで精一杯というのは始めだけ。

 二度目という事もあり、先程よりは痛みも少なく、自身も快楽を享受しつつ僅かに声を漏らしてしまう。

「んっ、あぁ。つっ・・・ま、さの、ぶさん。」

 殆ど湯には当たっていないといってもこれだけ激しく動けば湯船も揺れる。

 荒い息と湯船の湯が縁に当たってはじける音。

 そして僅かな、だがはっきりと情事だとわかる甘い声。

 それらが一体となって濃密な空間を作り出す。

「ああっ。」

 先に譲が気をやるとそれに続いて椎原も譲の中から自身を出して譲の腹部に濁ったものを出した。

 直ぐに立ち上がり、桶に湯を入れて譲を清め、自身を清める。

 荒い息を吐いている譲の顔は赤い。

 出来るだけ手早く身奇麗にしてから急いで脱衣所へと上げる。

 が。

「譲?大丈夫か?おい、譲。」

 どんなに低温に設定されている温泉だとしても浴室での激しい運動は厳禁。

 湯当たりした譲を見て宇治は思わず椎原を睨みつけたのは仕方の無い事といえるだろう。



 











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